にもかかわらず、ここまでつき合っていただいた読者の方々に心から感謝申し上げます。 恐らく「財務諸表は、体系はスッキリしているがその中身の数字となると、恣意性とはいわないまでも裁量の入り込む余地が相当あるのではないか」という印象をもたれたのではないでしょうか。
まさにその通りです。 これまでに述べた例だけでも決算における裁量性が大きくなっているのが分かります。
有形固定資産の減損処理ではその事業の収益見通しによって、関係会社の株式の減損処理ではその関係会社の収益見通しによって、税効果会計では会社の収益見通しによって、それぞれ減損の額や繰延税金資産の額が変わり、その結果会社の利益が変わってきます。 これらは、会計ルール設定者の間で議論をよんでいる、時価会計をどこまでどういうルールで取り入れるのか、という点に関連した問題点なのです。
最後にこの点に触れ、財務諸表の話はなかなか終わらないというむすびにしたいと思います。 会計ビッグバンの大きな流れの1つが取得原価主義から時価主義への移行でした。
簡単にいえば、資産を評価するのに、取得原価主義では取得するのに払ったお金の金額で評価するのに対し、時価主義ではその資産が将来いくらのお金を稼ぐかで評価します。 そこにはどうしても裁量が入ってきます。
そして、将来の見通しは足元の傾向に引きずられがちです。 足元の見通しが右肩上がりであれば将来にわたって右肩上がりとみてその右肩上がり分を現在の評価に取り込み、逆は逆になります。
足元の傾向が挺によって増幅されるわけです。 たとえば、赤字決算の会社が将来の黒字を見込んで繰延税金資産を計上していたところ、再度赤字になったとたん将来の黒字が危ぶまれるようになり、繰延税金資産を取り崩さざるをえなくなる、というケースが景気の下降局面では生じえます。
そうすると、その期の決算では、その期本来の赤字の上に繰延税金資産の取り崩しに伴う損失が上積みされることになります。 時価会計の持つこうした「景気の振れの増幅性」は、「裁量性」と並んで、時価会計を推進するに当たって十分に用心しなければならない大きな問題点です。
時価会計推進論者の中には時価会計を導入していたらバブルは生じなかったという人がいましたが間違いです。
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